Home / 恋愛 / 一通の手紙から始まる花嫁物語。 / 29話-1 平穏と、暗雲と。

Share

29話-1 平穏と、暗雲と。

last update Huling Na-update: 2025-05-29 20:01:10

* * *

「エルバート軍師長、及びフェリシア嬢、恩を仇で返すような事態となり、本当に申し訳ない」

しばらくしてフェリシアはエルバートと共に皇帝の間にてクロヌ皇帝から謝罪され、深く頭を下げられる。

エルバートに優しく抱き締められた後、フェリシアは治癒の呪文でエルバートの負傷した左肩と自分を治そうとした。

しかし、疲弊のせいか力は発動せず。

エルバートはディアムに応急処置として左肩を持参のハンカチで結ばれ、情けない気持ちを抱いたまま、エルバートにお姫様抱っこで、この場まで運んでもらったのだけれど……。

まさか、クロヌ皇帝に頭を下げられるだなんて。

「ユリシーズとハロルドについては一旦牢に入れ、称号を剥奪した後、他国へ追放し、ルークス皇帝にもこちらから謝罪するによって、どうかこの件はそれで治めて頂きたい」

(他国への追放。つまり、ユリシーズ殿下とハロルド様は奴隷扱いまで落ちるということ)

自分と同じような思いはさせたくない。

フェリシアは目でエルバートに訴えかける。

するとエルバートは頷き、口を開く。

「クロヌ皇帝、頭をお上げ下さい」

クロヌ皇帝は頭を上げ、エルバートを見る。

「私達は幸い、命を奪われずに済みました。よって、ユリシーズ殿下とハロルド軍師長の罰を減刑して頂きたい」

エルバートの発言にクロヌ皇帝は驚く。

「誠にそれで良いのか?」

「はい」

「では、ふたりの称号は一旦剥奪とし、貧しい領土に追放の上、そこの長と兵士として働かせるというのはどうであろうか?」

「それで構いません」

エルバートはクロヌ皇帝の提案を呑む。

「エルバート軍師長、恩に着る」

「今宵、魔討伐の祝賀会を開くによって、それまでしっかりと休み、是非、参加し楽しんでくれたまえ」

クロヌ皇帝との会話が終わり、フェリシアは皇帝の間に運ばれた時と同じくエルバートにお姫様抱っこをされながら部屋まで運ばれ、ベットに寝かされる。

するとクロヌ皇帝の命令で祓いの力を持つ医務室の一番腕の良い医師が部屋まで駆けて来て、エルバートは左肩を包帯で巻き直され、フェリシアも診てもらい大丈夫とのことで水分を取った。

そして治療後はエルバートに右手を握られたままベットで眠りにつき、休めたおかげか、魔討伐の祝賀会の前に目覚めた時には治癒の呪文が使えるようになり、念の為エルバートと自分を回復し、魔討伐の祝賀会に参加した。

けれどユリシーズとハロルドの姿はなく。

ディアムによるとユリシーズはエセリアル皇国の決まりで髪を斬ることが高貴でなくなる証となる為、シトラスの手によって美しい髪を斬られ、長めから顎より少し上のボブのような髪型となり、ハロルドと共に牢に入ったとのことだった。

「あ、フェリシア様!」

先に参加していたサフィラが駆けて来て、フェリシアの両手を掴む。

「執事長からぜんぶ聞いていて、心配で心配で」

「サフィラさん、心配をおかけしてしまい、申し訳ありません」

「いえ、ご無事で良かったです!」

「先程、自分の料理を並べ終えたところでして、宜しければ食べて元気を出して下さい」

サフィラの気遣いの言葉を聞き、フェリシアはエルバートを見る。

するとエルバートが頷き、ディアムも連れ、サフィラの料理まで移動する。

Patuloy na basahin ang aklat na ito nang libre
I-scan ang code upang i-download ang App

Pinakabagong kabanata

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   29話-5 平穏と、暗雲と。

    * * *しばらくして、エルバートは皇帝の間の階段前で跪き、ルークス皇帝を見つめる。だが、いつもの優しく穏やかな雰囲気はなく、冷たく怒っているようで、エルバートは気を引き締める。するとルークス皇帝がエルバートを玉座から見据える。「先日の魔の討伐の件で、伝えたきことがある」「樹海で魔の危害にあった子供が貴族のご息子であり、討伐が早ければ息子がこのような目には合わなかったと昨夜の茶の席で言われ、我だけでなく、このアルカディア皇国をも恥をかいた」「よって、エルバート、お前に牢獄行きを命じる」牢獄行き、だと?それに昨夜、茶の席にルークス皇帝が参加したとのことはディアムから聞いている。だが、今回の魔で危害にあった子供の情報はない。(私を牢獄行きにする為の虚言か?)いずれにしてもここで牢獄行きになる訳にはいかない。「ルークス皇帝、この度は恥をかかせ、大変申し訳ありません」「違う罪ならばいくらでも受けますので、何卒、牢獄行きだけはお許し下さい」エルバートは深々と頭を下げる。「エルバートよ、顔を上げよ」エルバートは顔を上げる。するとルークス皇帝は立ち上がり、玉座の階段を降り、エルバートの目の前まで歩いてくる。そして鞘から剣を抜く。エルバートはそれに反応し、即座に鞘に右手をかける。「マゾクだけではなく、我をも殺そうとするとは」「やはり、お前は咎人だ」ルークス皇帝は強く宣言し、エルバートの右肩を剣で斬った。跪く体制は崩れ、エルバートは両足を床につき、右肩を左手で押さえる。ルークス皇帝の顔を見ると、とても冷たい顔をし、気づかざるを得ない。ルークス皇帝が、魔に乗っ取られている。「もう良いぞ、入れ!」ルークス皇帝は声を上げる。すると皇帝の間に兵が数人駆け入って来た。「エルバートを今すぐ牢へ連れて行け!」ルークス皇帝が強く兵に命じ、エルバートは兵の2人に両肩を持ち上げられ、立たされる。意識が薄れ、ルーク

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   29話-4 平穏と、暗雲と。

    ディアム、アベル、カイは剣を、シルヴィオは銃を抜き、花びらが舞う中、魔を討伐していく。そして本物の魔のみになった時には夜になっており、エルバートは魔を剣でナナメに美しく斬り、浄化され、光となり、討伐完了。ルークス皇帝に魔の討伐の報告を済ませ、ディアムと共に高貴な馬でブラン公爵邸に帰った時にはすでに深夜だった。エルバートは玄関の扉を開け、駆け込み、はぁ、と息を切らす。「フェリシア、遅くなった」「ご主人さま、おかえりなさいませ」このような寒い玄関でずっと待っていてくれたのか。エルバートは魔除けコートをフェリシアの両肩に掛け、フェリシアと抱き合う。するとフェリシアが自然と涙を零し、エルバートは儚げな顔を浮かべる。今朝、心配な顔をしていた事を分かってはいたが、日帰りだったとはいえ、不安に、そして寂しくさせたのだと自覚せざるを得ない。しかし、朝にはまた勤めに出なければならない。「フェリシア、今宵、月を見よう」「はい」エルバートはフェリシアと月を見る約束を交わした。* * *その日の夜。フェリシアは帰って来たエルバートとバルコニーで約束の月を見ることになった。エルバートはバルコニーの扉を開け、先に出る。フェリシアがバルコニーに出るのを躊躇すると、エルバートは、ふ、と笑う。「フェリシア、おいで」エルバートらしくない柔らかく甘い言葉に胸をときめかせながらフェリシアは差し出された手に自分の手を添え、バルコニーへと出る。バルコニーの柵まで近づき並んで月を見ると、ブラン公爵邸の中庭やアルカディア宮殿でのエルバートの特別な部屋で見た時よりもずっと月を近くに感じた。エルバートに肩を抱き寄せられる。銀の美しい髪を流したエルバートの存在は、月よりももっと近くに感じ、このまま時が止まって欲しいと、離れたくないと思った。けれど、朝はきてしまう。エルバートはルークス皇帝に呼び出しを受けているとのことで、銀の長髪を麻紐でくくり、高貴な軍服を着て玄関の外に立ち、こちらを

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   29話-3 平穏と、暗雲と。

    「フェリシアは祓い姫であり、料理も美味く、とても魅力的である」「しかしながら、フェリシアは我が認めたエルバートの正式な花嫁候補。そしてエルバートは我の一番に信頼出来る存在」「だからこそ我は、民の幸せと同様、エルバートとフェリシアの幸せを心から願っておる」エルバートはルークス皇帝のお言葉を聞き、顔を右手で覆う。自分のことをそのような存在だと思ってくれていたとは。それだけでなく、自分とフェリシアの幸せまでも。対して自分はフェリシアを欲していると答えるのではないかと一瞬焦り動揺し、情けない。エルバートは顔を覆うのを止め、中庭から立ち去るべく背を向け歩き出す。エルバートの麻紐でくくった銀の長髪が揺れ動く。(私はルークス皇帝をこれからもお支えし、守り続ける。例え自分の命に変えてでも)* * *翌日の朝。フェリシアはエルバートと共に皇帝の間に行き、ルークス皇帝に挨拶をするとフェリシアは宮殿勤めのお役目を正式に解かれ、馬車に乗り、高貴な馬に乗るエルバートとディアムに守られながらブラン公爵邸へと帰った。リリーシャ、クォーツ、ラズールに「おかえりなさいませ」と玄関前で温かく出迎えられ、フェリシアは涙し、リリーシャと抱き合う。こうして、晴れてブラン公爵邸で暮らす日常が戻り、エルバートは昼前にはアルカディア宮殿へ再び向かい、その夜、フェリシアは牛の赤ワイン煮込みを作り、エルバートの為にだけ料理を作るという新年の祝賀会での約束をようやく果たす事が出来たのだった。けれど、エルバート達とブラン公爵邸で過ごず、穏やかで宝物のような時は瞬く間に過ぎ去って行き、15日後。エルバートが日帰りで魔の討伐に行くこととなった。フェリシアはエルバートを玄関の外で見送り、祈る。(ご主人さまが無事に帰って来られますように)* * *エルバートが魔の討伐の場にあたる樹海の奥に到着したのは昼前のことだった。ここは帝都の隣にあり、ブラン公爵邸からディアムと共に高貴な馬でアルカディア宮殿へ向かい、宮殿入りした後、アベル、カイ、シルヴ

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   29話-2 平穏と、暗雲と。

    そしてテーブルを見ると、並べられた複数の皿に紫色のスープのようなものが盛り付けられており、フェリシア達3人は驚愕した。「こちらがサフィラさんが作ったお料理でしょうか?」フェリシアは恐る恐る尋ねる。「はい! 鴨肉を赤ワインで煮込んだ料理となります!」サフィラが自慢げに言うと、ディアムがフェリシアの耳元で囁く。「……どうやら、私達が援軍に来る前の魔討伐の際、魔ではなく、サフィラ様の料理で腹痛を起こし倒れていたとシトラス殿下からお聞きしたので、食べない方が宜しいかと」フェリシアは料理よりも更に驚愕な事実を魔討伐の祝賀会の場で知ることとなった。その後、アベル、カイ、シルヴィオにも会い、皆と祝賀会を楽しみ、エルバートとエセリアル宮殿の部屋で眠る最後の時が訪れる。(なんとか仰向けで寝ているけれど、ご主人さまの顔が見られない……)「今宵は背を向けて寝ないのだな」「いつものように寝なくて大丈夫か?」(ご主人さま、よく覚えてらっしゃる……)「はい、だ、大丈夫です」フェリシアは肯定する。すると銀の長髪を流したエルバートに左手を握られる。「ご、ご主人さま!?」「抱き寄せた方が良かったか?」「な」顔全体に熱さを感じると、エルバートは、ふ、と笑う。「か、からかわないで下さい」「至って真剣なんだが」「もうっ、寝ます」エルバートに寝る宣言をしたものの、魔討伐の祝賀会前に一度寝たせいと、ドキドキで眠れなかった。そして、翌日の朝。フェリシアはエルバートとゼインと共に皇帝の間でクロヌ皇帝から勲章と剣、金貨、高級な食物や原料等の魔討伐の報酬をもらう。続けて壊れたブローチも返却されエルバートが受け取ると、フェリシアは行きと同じくゼインと同じ馬車に乗り、高貴な馬に乗るエルバートとディアム、護衛と軍に守られながらエセリアル宮殿の門を出た。それからしばらくの間、馬車に揺られ――、アルカディア宮殿へと帰還し

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   29話-1 平穏と、暗雲と。

    * * *「エルバート軍師長、及びフェリシア嬢、恩を仇で返すような事態となり、本当に申し訳ない」しばらくしてフェリシアはエルバートと共に皇帝の間にてクロヌ皇帝から謝罪され、深く頭を下げられる。エルバートに優しく抱き締められた後、フェリシアは治癒の呪文でエルバートの負傷した左肩と自分を治そうとした。しかし、疲弊のせいか力は発動せず。エルバートはディアムに応急処置として左肩を持参のハンカチで結ばれ、情けない気持ちを抱いたまま、エルバートにお姫様抱っこで、この場まで運んでもらったのだけれど……。まさか、クロヌ皇帝に頭を下げられるだなんて。「ユリシーズとハロルドについては一旦牢に入れ、称号を剥奪した後、他国へ追放し、ルークス皇帝にもこちらから謝罪するによって、どうかこの件はそれで治めて頂きたい」(他国への追放。つまり、ユリシーズ殿下とハロルド様は奴隷扱いまで落ちるということ)自分と同じような思いはさせたくない。フェリシアは目でエルバートに訴えかける。するとエルバートは頷き、口を開く。「クロヌ皇帝、頭をお上げ下さい」クロヌ皇帝は頭を上げ、エルバートを見る。「私達は幸い、命を奪われずに済みました。よって、ユリシーズ殿下とハロルド軍師長の罰を減刑して頂きたい」エルバートの発言にクロヌ皇帝は驚く。「誠にそれで良いのか?」「はい」「では、ふたりの称号は一旦剥奪とし、貧しい領土に追放の上、そこの長と兵士として働かせるというのはどうであろうか?」「それで構いません」エルバートはクロヌ皇帝の提案を呑む。「エルバート軍師長、恩に着る」「今宵、魔討伐の祝賀会を開くによって、それまでしっかりと休み、是非、参加し楽しんでくれたまえ」クロヌ皇帝との会話が終わり、フェリシアは皇帝の間に運ばれた時と同じくエルバートにお姫様抱っこをされながら部屋まで運ばれ、ベットに寝かされる。するとクロヌ皇帝の命令で祓いの力を持つ医務室の一番腕の良い医師が部屋まで駆けて来て、エルバートは左肩を包帯で巻き直

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   28話-6 決して渡さない。

    するとエルバートはそれを剣で受け止める。「いや、まだだ。剣を持っているからな」「そうか、ならば」ユリシーズは剣に力を込め、押す。するとその反動で剣は押し返され、ユリシーズはその剣でわざと自身の頬を切る。それを合図にハロルドがフェリシアの腹を更に強く締め付ける。「あ、あ……」フェリシアは苦しみの声を上げ、ディアムはその姿を見ている事しか出来ず、自身の唇を噛み締める。だが、フェリシアはエルバートに向けて必死に告げる。「ご主人……さま……わたしは……大丈夫……」だから、必ず勝てと。苦しい思いをしてもなお、お前の意思は変わっていないのだな。フェリシア、苦しめて、すまない。すぐに決着をつける。「フェリシアはお前になど、決して渡さない」エルバートは宣言し、物凄い殺気をユリシーズに放つ。そして、祓いの神のような立ち姿で、エルバートはユリシーズが握る剣を一瞬で飛ばし、首元に自身の剣先を突き付けた。「それまで! 勝者、軍師長エルバート!」シトラスが結果を告げると、フェリシアがくたっとなり、ハロルドはフェリシアの体を片腕で支えつつ、フェリシアの首を掴む。「ハロルド、どこまで愚かになる気か。その手を今すぐ下ろし、フェリシア嬢を解放せよ」クロヌ皇帝が命じると、ハロルドは首から手を放し、ディアムにフェリシアを渡す。そして、シトラスとゼインがハロルドの元まで行き、ハロルドを捉える。「ユリシーズ、貴様は負けを認め、エルバート軍師長にこの場で謝罪せよ」クロヌ皇帝に命じられ、ユリシーズはエルバートの力を認めざるを得ず、「私の負けだ。この度は申し訳なかった」と言い、深々と頭を下げる。「こちらを見ろ」エルバートが命じると、ユリシーズは頭を上げる。するとエルバートは手を差し出す。「生きて償え」ユリシーズは深く頷き、エルバ

Higit pang Kabanata
Galugarin at basahin ang magagandang nobela
Libreng basahin ang magagandang nobela sa GoodNovel app. I-download ang mga librong gusto mo at basahin kahit saan at anumang oras.
Libreng basahin ang mga aklat sa app
I-scan ang code para mabasa sa App
DMCA.com Protection Status